富田林中学・高等学校
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2023.06.29

行事

【高校長】3年生を対象に人権講演会を行いました

 6月28日(水)6・7限に大阪芸術大学の石川結加先生をお招きし、3年生を対象に人権講演会を行いました。「今日の部落問題-すべての人がよりよく生きるために-」という演題で、部落問題の歴史的背景や今日的課題について詳細に教えてくださいました。2010年および2020年に実施された人権問題に関する府民意識調査報告書によると、同和地区や同和地区の人に対する差別意識が今でも残っていると思っている人が68%存在し、身元調査やインターネット上の誹謗中傷や所在地リストの掲載等の問題があると考えている人は50%を超えているといった状況を紹介された後「寝た子起こすな」論にも言及されました。「そっとしておけば、部落問題は自然になくなる。部落問題学習をするから、差別意識が生まれる。知らなければ知らないままで、差別意識は生まれない。」「本当にそうなのだろうか?そっとしておけば、ネット上の誹謗中傷の書き込みは無くなっていくのだろうか。」石川先生は「否」「部落問題を解決するためには部落問題学習は必要!」と述べられ、メディアを通じて部落問題を考える機会を設定したり、人権まちづくりの取組みに関わったりすることなどを通じて、すべての人がより良く生きることのできる社会をつくっていきたいと、公演を締めくくられました。  

 私が嘗て富田林高校の1年生に在籍していた時、校内で部落差別発言がありました。人権HRが行われ、確か部落問題研究会もコメントを出したように記憶しています。私は高校卒業後もその案件の当事者やその家族の皆さんと仲良く、親しく付き合っていたこともあり、部落差別の現実を具に目撃する機会がありました。明るくて元気だった子が結婚差別にあって自殺未遂を図ったことを知った時には、大きなショックを受けながら、温かい言葉一つ欠けることのできない自分の無力さにぞっとしました。

 大阪府の人権教育推進プランには「人権教育を実効あるものとするためには、それぞれの人々がそこで学んだ内容を知識・理解の段階にとどめるのではなく、自分自身の行動原理や態度として身に付け、日常生活での様々な出来事を通じて人権問題について自ら積極的に考え、実践することを目標として実施することが重要である。また、その発言や行動等が他者に受容されるために必要な技術・技能を併せて習得できるよう実施することが必要である。」と記載されています。大学を卒業後、府立高校の教員となってから今日に至るまで、私の心の中には常にこの体験が消えずにありました。あのようなことは二度と起こってほしくありませんが、仮に今度同じような場面に出くわしたときに、私は「自ら積極的に考え」何を「実践すること」ができるのか、その「実践」が「他者に受容されるために必要な技術・技能」はどうすれば習得できるのかという思いは、今も私の中に強くあります。だからこそ、学校はすべての生徒が安心して学力の向上と体力の増進に励むことのできる場所であり、そこで育った人間が、より良き社会の担い手になるための準備ができる場所でなければならないという意味において、学校教育の根幹は人権教育にあると私は思っています。

「ぜんぶ全力」の富高生へ。人権問題は何も特別のものではありません。「ぜんぶ全力」の取組みの中で、自分は誰に対してもフェアに向き合っているか。そんなことを深く考え「自分自身の行動原理や態度として身に付け」ていってほしいと思っています。