2023.12.12
【高校長】2年生を対象に人権講演会を行いました
12月8日(木)の6、7限、神戸学院大学の金益見(キムイッキョン)准教授をお招きし「マイノリティと向き合う-メデイァ・リテラシーとエンパシーを身につける-」と題して人権講演会を頂きました。途中、5分間の休憩を挟みながら、トータルで90分というボリュームのある講演会でしたが、分かりやすい説明の中に具体的で身近な内容の挿話等が沢山あり、聞く側にとって大変インパクトの有るお話でした。生徒も一心に聞き入っていました。
前半はメディア・リテラシーについてのお話で、過激で偏っているかもしれない内容のニュースがメディアの中でどのように流布され、人々がそれをどのようにして信じ込んでしまうのか、そしてそれがどれほど恐ろしいことなのかということを中心に教えていただきました。今、私たちはインターネットを通じてSNS等のメディアと接していますが、自分がいくつかのサイトや情報にアクセスすると、やがてそれに類似した記事ばかりが次々と表示されるようになるという経験をすることがあります。これは便利な側面もありますが、私たちの個人情報がメディアによって収集されることで、逆に私たちの知識や好みまでもがメディアによって操られてしまっているのかもしれません。改正高等学校学習指導要領解説(国語編)においても、「様々な情報を適切に判断し取捨選択する力や、筋道立てて物事について考える力」が求められており、更に「テレビや新聞、インターネットなどの様々な媒体を通じて伝えられる情報は、(中略)その情報がどのような立場から切り取られ、どのように組み立てられているかを慎重に吟味する必要がある。」と記載されています。様々な情報が簡単に手に入る世の中だからこそ、偏った情報に踊らされることのないよう、弁証法的に思考する力が必要だと思いました。
後半は、マイノリティに関するお話でした。英語のminorityとは一般に「少数派」という意味ですが、その形容詞形であるminorには「あまり重要ではない」「たいしたことがない」という意味が含まれているそうです。つまり、minoriyという言葉には「社会的に重要でない」「たいしたことがない」と判断されることで不当な扱いを受けたり不利益を被ったりしている少数派の人達という意味が含まれています。そして、majorityの側はその現実を「知らないから分からない、分からないから気付かない、気付かないから傷つける」、minoriyの側は「傷つけられるから言い出せない、言い出せないから伝わらない、伝わらないから知らないままになる」という悪循環が生じることがあり、このことが課題であると金益見准教授は仰いました。まったくその通りだと思います。大阪府教育庁が毎年発行している「府立学校に対する指示事項」においては、「人権感覚を高め、人権問題を正しく理解するとともに、差別を許さない姿勢を身に付けること」が求められていますが、その際には現実にある差別の実態を知らなければ何も始まりません。知って、ハッとして、そこから自分がその人の立場であればどう感じるかについて考えること、このことを指して金益見准教授はエンパシーと仰いました。このことは自分に対してmajorityの優位を確保したうえで、誰かのために施すということではないという意味で、思いやり(シンパシー)とは似て非なるものだとも仰いました。minorityと言いmajorityと言っても、それは決して固定化されたものではなく、エンパシーを発揮して生きることが、人として良く生きるために必要なことだと思いました。