2024.02.29
【高校長】令和五年度卒業式を挙行しました
令和6年2月29日、令和5年度卒業式を挙行しました。時折、うららかな日差しもさす中、76期生達は本校を巣立って行きました。嬉しくもあり寂しくもあり、複雑な思いとともに、その後ろ姿を見送りました。一人ひとりの今後の活躍を願ってやみません。以下に、卒業式の式辞を掲載します。
中庭の木蓮(もくれん)の蕾(つぼみ)もほころび始め、春の息吹が感じられる季節となりました。この佳き日に、大阪府立富田林高等学校 第七十六回卒業式を挙行いたしましたところ、公私共にご多用にもかかわりませず、本校同窓会会長 土井修市(どい しゅういち)様、PTA会長 駄場中大介(だばなか だいすけ)様をはじめ、多くのご来賓の皆様のご臨席を賜ることができました。共に卒業の門出を祝っていただけますことに、高い所からではございますが厚く御礼申し上げます。誠にありがとうございます。
また、本日は、多くの保護者並びにご家族の皆様のご列席を賜ることができ、大変嬉しく思っております。保護者の皆様におかれましては、お子様の高校卒業という節目に当たり、このように立派に成長された姿をご覧になるにつけ、感激も一入のことと存じます。今日まで深い愛情を注いでこられた皆様に敬意を表しますとともに、心からお祝いとお喜びを申し上げたいと思います。本日は、誠におめでとうございます。この式の後は、ご家族の皆様全員で卒業を祝ってあげてほしいと思います。
さて、本日、栄えある卒業証書を授与された、本校、第七十六期生二百三十二名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。皆さんの門出を、心よりお祝いいたします。皆さんが、この卒業の日を迎えることができたのは、皆さん自身の努力の賜物であることは言うまでもありませんが、その努力を支え続けてくれた多くの人の存在があったことを深く心に刻み、今日はその人たちに改めて感謝の気持ちを、言葉で伝えてほしいと思います。
皆さんは、これからそれぞれの希望に応じた進路へと新たな歩みを進めることになりますが、その餞として、この一年間、機会あるごとに私から皆さんに伝え続けた一つの言葉をもう一度贈りたいと思います。それは、皆さんもよく知るディズニーランドの創始者であるウォルト・ディズニーが残した言葉です。
「考えなさい。調査し、探究し、問いかけ、熟考するのです。」
「考える」というのは決して簡単にできることではありません。何故ならば、「考える」ためには、その土台となる正確で幅広い知識や技能が必要だからです。その知識や技能をベースに、初めて思考力や判断力、表現力といった「考える」ために必要な力を得ることができるのです。だからこそ、ディズニーは「考えなさい」と言った後、更に「調査し、探求し、問いかけ」なさいと言葉を続けているのだと思います。
私がこの言葉を皆さんに伝えたいと思うのは、これから先皆さんは、それぞれの進路先における日々の生活の中で、正解が一つでない問いに対する答えについて「考える」ことを求められる、そんな場面に何度も出くわすだろうと思うからです。今、世界では、産業構造や社会システムが非連続的とも言える程の急激なスピードで変化しており、人工知能、ビッグデータ、Internet of things、ロボティックス等の高度な先端技術が発達することで、既にSociety5.0と言われる時代が到来していると言われています。先日、人の脳にチップを埋め込むことにより、心に思うだけでコンピュータに命令が送れる技術の、臨床実験が始まろうとしているというニュースを目にしました。もし、この技術が実用化されれば、体の機能の一部を失ったとしても、それを取り戻すことができるようになるかもしれません。夢のような話ですが、このような技術革新が続くことで、何年か先の世の中には、今はまだ見ぬ業種や業態が次々と現れるだろうと予測されています。その一方で、今ある仕事の多くは自動化され消滅していくのかもしれず、現に、二〇三〇年代には約六十五%の人達が、今は存在していない職業に就くだろうとも言われています。皆さんも将来は、現在、存在すらしていない職業に就いているかもしれません。皆さんを待っているのはこのような予測困難な世の中なのです。こうした時代を生きる皆さんに期待されているのは、アントレプレナーシップ。日本語では一般に起業家精神と訳されますが、今はまだ微かに夢見られるだけで、現実的なニーズとして認識するのは難しいかもしれないことであっても、諦めずに「調査し、探究し、問いかけ、熟考」することで新たなニーズを掘り起こし、やがてはそれに対する実現可能な答えを導き出すことができる、皆さんにはそんな人材に育っていくことが求められているのです。私は、こんなに楽しい時代に生まれ合わせた皆さんは、本当に運が良いと思います。皆さん、ワクワクしませんか。
かく言う私もまた、皆さんと同じ船に乗っていると思っています。私が皆さんと初めて出会ってから約一年が経ちましたが、一年前の私も、自分自身の新たな進路を前にワクワクしていました。その時、私の中には「正解が一つでない問い」がいくつも存在していたからです。それらの問いについて考える時、一番気になっていたのは、皆さんが既に三年生になっているということでした。皆さんが卒業するまで一年しかありません。この一年間で、私は校長として皆さんのために何ができるだろうか。これは私にとって、正解が一つでない大いなる問いでした。あれこれと迷いつつ暫く経った頃「ぜんぶ全力」という言葉を耳にして、何と素敵なフレーズだろうと思いました。その後、部活動や学校行事、日々の学習等の場面で「ぜんぶ全力」を合言葉に頑張っている皆さんの姿をあちこちで目にし、とても明るい気持ちになったことを記憶しています。そんな中でこの問いに対する一つの答えに思い至りました。私が皆さんのためにできること、それは校長として「皆さんの力を信じ、励まし勇気づけ続ける」ということです。それ以来、私は学年集会や終業式、始業式等、皆さんに話す機会がある度に、夢は叶う、「ぜんぶ全力」の君たちなら必ずできると言い続けました。今もそう思っています。皆さんもこの一年間、「自分になら必ずできる。」と思って「ぜんぶ全力」で学校生活に取り組んでくれたのだろうと思います。例えば、皆さんの学力が過去に例のない程の伸びを示したと聞き、私は大変嬉しく感じましたが、このことも皆さんが自分の力を信じ「ぜんぶ全力」で取り組んできた一つの証だと思っています。だからこそ皆さん、これからも自分を信じて「ぜんぶ全力」。富高生のあるべき姿を見事に言い当てた、このフレーズを末永く大切に、深く心に刻んで生きていってほしいと思います。そして、皆さん一人ひとりが進みゆく次の世界でも、富田林高校の卒業生として、失敗はあっても恥じるところは無い、そんな行動を積み重ね、人生百年とも言われるこれからの時代を雄々しく生き抜いていってほしいと願っています。
結びになりますが、皆さん、健康にはくれぐれもご留意ください。先程皆さんが斉唱してくれた校歌の中に「この自然をば朝な夕なに学びてん」という一節がありました。皆さんが本校で過ごした三年間は、皆さんに多くの学びをもたらしたでしょうか。そうなってくれているなら、本校校長として、また皆さんと同じ庭の教えを受けた同窓生の一人として、これに勝る喜びはありません。いつの日か、皆さんが地域の発展を担う人材、グローカルリーダーへと成長し、創立百年を超える伝統校である母校富田林高校の、次の時代の歩みを照らす指針となってくれることを祈念して、卒業式の式辞と致します。
令和六年二月二十九日
大阪府立富田林高等学校
校長 田中肇